山口県社会福祉協議会主催の「サービス運営者研究会」にサービス実施団体として参加してきました。
日時:平成31年2月7日(木)10:20〜14:30
会場:山口県労働者福祉文化中央会館
そもそも有償助け合いサービスとは?
かつて、家庭や親族内で解決することが難しい課題は、隣近所の助け合いなどで対応されてきました。
今でも地域では、「お互い様の助け合い活動」やボランティアとして、様々な人が無償で活動を行っています。
一方、無償の助け合い活動においては、お願いをする側にも「頼みにくい」「気が引ける」等の気持ちが生じたり、担い手側に「どこまでサービスを提供すれば良いのか」等の不安感も少なからずあります。
有償助け合いサービスとは、そうした思いを少しでも解消し、無償で行われている「お互い様」の活動を継続していくための一つの方法として、利用料を介在させたものです。
参加者の顔ぶれを見ると、社会福祉協議会支局からの参加者が8割程度、実際に有償助け合いサービスを実施している任意団体は2割程度の参加でした。
※本記事については、講演者である社会福祉法人しみんふくし滋賀の成瀬氏のご許可をいただいた上で作成しています。
別途資料で山口県内の「地域福祉活動事例集」が配布されました。いろんな地域がどのように活動しているのか学ぶことができるので、ぜひご確認ください。
有償助け合いサービスの継続性を高めるコツ
話し手
住民参加型在宅福祉サービス団体全国連絡会 副代表幹事 成瀬和子氏
社会福祉法人しみんふくし滋賀でも副理事長
住民参加型在宅福祉サービス団体全国連絡会とは?
- 地域住民の参加を基本とした
- 営利を目的としない
- 住民相互の対等な関係と助け合いを基調とする
- 有償、有料制、時間貯蓄制度、点数預託制度によって行う家事援助、介護サービス(ホームヘルプサービス)等を行うとともに介護保険制度や障害者自立支援法に基づくサービスを実施するところもある
- 住民の自主組織、市区町村社会福祉協議会、生活協同組合、農業協同組合、福祉公社、事業団が運営している
- 平成29年3月現在の登録者数2,042団体
住民互助の仕組みづくりの必要性
- 人口減少、少子高齢化の進行、社会的孤立の広がりを背景に地域づくり、生活支援体制を再構築する必要がある
- 住民主体の理念に基づき、まちの身近な困りごとを受け止め、住民自身が解決に迎えるボトムアップ作り
- 「助ける」「助けられる」のではなく、住民が自分の力を活かしながらお互いに支え合える関係性を築き、それが地域の助け合いの基盤となる
全国的な有償助け合いサービスの状況
- 会員制を採用している団体が8割強
- 1団体あたりの登録者317人
- 同担い手数108人(担い手1人あたりの登録者数は約3人)
- 担い手の年齢は60代が最も多く、次いで70代(60代はサービス実施地域では「若者」)
- 研修会数は内部研修月3回、外部研修年3回の割合が高い
- 提供サービス内容に関わらず利用料が定額である団体が半数以上(サービスの実態に応じて適切な利用料の設定をすることが必要である)
- 利用料金の平均は832円、担い手への支払い平均は736円/時間
- 日常的に協力・連携関係がある団体は社会福祉協議会が最も多い
※平成28年度 全国社会福祉協議会調査結果より(白木半島地区コミュニティ協議会事務局内にて冊子を保管しています。ご希望者には貸し出します。)
有償助け合いサービスの課題
担い手不足
- 介護保険制度が始まってから、担い手不足が顕著になってきている
- 研修の機会を増加させ、多様なニーズに応えられるようにする
- 担い手自身が楽しく活動できたり、やりがいが得られるようなものにしていく
資金不足
- コーディネーターへの支払い、(拠点施設がある場合は)家賃、水道光熱費、備品購入費など利用者への負担にならないようにするには、市町村と協力して助成金や補助金に頼るこも考えられる
- 利用者と協力して、小物作りや野菜作りで収入をえることも
利用者負担額
- 「安ければいい」ということではなく、適切な対価を設定することで利用者の心理的な負担がなくなる。
- できないことははっきりと断る勇気も必要。
規制対応(運送業許認可や最低賃金など)
事故対応について
- 事前にリスクについてよくよく口頭で説明を実施する。
- 場合によっては書面の交付等によりリスク事項を説明しておく。
- 利用者だけでなく、親族などにも含めて説明をする
- サービス利用時に同意書の提出を求める。
許認可等について
運輸局との調整を実施することが必要になるため、個別に所管の運輸局に相談すべき。
とにかく監督官庁との適切に交渉する必要がある。
サービス継続、展開に必要なこと、留意点
サービス実施事務局の拠点施設(居場所作り)
空き家や遊休施設(公民館、学校跡地等)の情報を行政等に教えてもらいつつ、有効に活用している団体もある
サービス担い手仲間
拠点施設に仲間が集まることで横のつながりができ、悩みを共有しやすくなる。また、担い手にとって活躍の場を用意することでやりがい
良い指導者と適切な評価サイクル
外部から専門家にきていただくなど、取り組みを外部からチェックしてもらうことも必要。地域内で積極的に取りまとめを行ってくださるような代表者を探すことも大切。
また「実施して満足」するのではなく、実施者からアンケートをとるなどしつつ、サービスの向上に資する取り組みを実施していく必要がある。一定期間経過した後は取り組みの状況を整理し改善点を洗い出す必要がある。
適切な料金設定
「安ければいい」というものではない。利用者にとっても安すぎる単価設定は心理的負担につながり、継続した利用を妨げてしまうことになるため。
まとめ
- 全国的な取り組みの状況を知ることで「まず最初のアクション」を起こせる
- 「1歩先」を行っている地域を参考にさせてもらう
- どこの地域でも出る課題は似ている。後は「対応するかしないか」
- 制度の枠にとらわれずに対応していくことが必要になる。
有償助け合いサービスにおける運営上の課題とその解決策まとめ
サービス提供を「する人」が足りない
地域住民の高齢化に伴い、サービスを提供する人が足りなくなってしまうのはどこの地域でも共通の課題です。
そんな中でもサービス提供者を多数集めているところ(当サイト運営者)では、「自治会との連携」により人伝てでお願いしていくという取り組みを行っています。
いくら広報で募集をかけてもうまくいかないケースは、地域にすでにある自治組織と連携すべく動いてみてはいかがでしょうか。
サービス提供を「受ける人」がいない
提供する人はいるのに「サービスを受ける人」がいない場合は、
「そもそも困っている人がいない」
「困っている人はいるが見つけられていない」
のどちらかになります。前者については望ましい状況と言えますが、人口が減少し高齢化が進んだ地域では後者が多いであろうことが推察されます。
「困っている人の掘り起こし」については包括支援センターや民生委員の方との連携をすることで解決している取り組み事例がありましたので、参考にされてみてはいかがでしょうか。
特定の人や家庭に負担が偏る
担い手は多くても「大家族がみんなで協力していくれている」というケースがあることを忘れてはなりません。
特定の家庭に負担がかからないよう、地域ぐるみで取り組みを進めていけるように、様々な組織と連携していくことが必要になります。
お金がない
誰しもが直面する課題だと思いますが、具体的に資金面の課題を解決している地域の取り組みで面白い事例がありましたのでご紹介します。
「賛助会員」という形で「労力の提供は難しいけど資金面で協力できる」人を募るという事例がありました。また、イベント実施時に取り組みについて説明し「後援いただく」ことや、チラシやパンフレットに企業名を載せるなど「スポンサー」を募集する、といった方法も考えられます。
当メディアについてもインターネット上でスポンサーを募り、広告料収入で運営しております。独自財源の獲得方法について詳しい方法にご関心がある方はお気軽に事務局までご連絡くださいませ。
白木半島地区コミュニティ協議会の有償助け合いサービスについての取り組み
白木半島地区の関係者のみなさまへ
白木半島地区コミュニティ協議会でも有償助け合いサービスを実施しており、2019年度はサービス内容に「草刈り」を加えています。
サービスの申込みについては、協議会事務局までお気軽にお申し付けください!(ご本人ではなくお子様、お孫様からの申込みでも柔軟に対応してまいります。)
サービスを実施している他自治体のみなさまへ
取り組み先進地域白木半島地区の活動内容について詳しく知りたい方も、お気軽にお問い合わせください(視察、講演希望)。