イタリアの過疎の町で始まった町全体を一つのホテルと捉えて地域に産業を生んでいく取り組み「アルベルゴ・ディフーゾ(Alberghi Diffusi)」。
宿泊業にとどまらず空き家活用や地域に根差した産業づくりにも好循環を生んでいるイタリアの取り組みを学び、地域ビジネスづくりについて考えるべく、ゲストハウス勉強会に参加してきました。
このページの目次
イタリアで始まった「アルベルゴ・ディフーゾ(Alberghi Diffusi)」とは?
アルベルゴ・ディフーゾが1分でわかる3つの特徴
- 村全体が「宿泊所」
- 不便さを楽しむ場所として滞在する
- 過剰なサービスや装飾、修繕をしない
「昔の村の生活」をそのまま体験することができるような取り組みのことです。
1980年代に始まった伝統集落再生の試み。日本と同じく過疎高齢化に悩むイタリアの過疎の町で始まった町全体を一つのホテルと捉えて地域に産業を生んでいく取り組みのことです。
❶不便さを楽しむ、❷必要ではない過剰なサービスや装飾はしない、という点が日本の田舎で応用なのではないかということで今注目が集まっています。
あえて「もてなさず」「綺麗にしすぎず」昔の人々の暮らしをそのまま再現するような宿が集積しているのです。94%が空き家だった集落が再生したこともあったそうです。
「昔の村に知り合いがいて、知り合いの家にサクッと泊まりに行かせてもらう」というようなイメージでしょうか。
イタリアで始まった「アルベルゴ・ディフーゾ(Alberghi Diffusi)」の意味とは?
イタリア語で「Alberghi」は「ホテル」、「Diffusi」は「分散・拡散した」という意味があります。つまり「Alberghi Diffusi」は「分散型ホテル」ということです。
イタリアを中心にヨーロッパ各地に広がり、加盟ホテル数は150軒以上となっています。
あえて古いものをそのまま残す!「アルベルゴ・ディフーゾ(Alberghi Diffusi)」3つのメリット
- 文化的価値のある暮らしがそのまま残っていて体験できる
- 観光地やロケ地としての活用が期待できる
- 後の世代に負担をかけずに地域の魅力を保存できる
「アルベルゴ・ディフーゾ(Alberghi Diffusi)」に学んで日本の田舎に応用するには?
宿を運営する人をどうするのか
ファーストペンギンはできる人がやれる人がやればいい、ということかもしれないですが、複数の宿を運営し始めるにはどのようなことが必要なのでしょうか。
イタリアも全て成功しているわけではなく、第三セクターがやっているものなどで失敗している事例も複数あるそうです。「成功している土地ではこうやっている!」のような典型例はなく、その土地ごとに方法は異なっているようです。
やはり、モノを作っても大切なのは「人」ということで、その土地とそこに住む人によって作戦は変わってくるということでしょうか。
シロアリにやられている木造空き家が多い日本はどうすればいいのか。さすがにコストがかかるのでは?
石造りの家が多い欧州では、改修にコストをかけずともある程度の強度が保たれているため「お金をかけずにできる範囲で」ということが比較的行いやすい状況にあります。
一方で、日本の家屋はそのほとんどが「木造」です。シロアリなどにやられて基礎から厳しい状態になっているものがその多くを占めています。この点についてはイタリアと大きく異なる部分です。が、今のところ抜本的な解決策は見つかっていない模様です。
耐震規制などとの戦いはどのように進んでいったのか?
イタリア内でもまだ戦いが進んでいる…という状態のようです。もはや「規制を作る」ということを意識しながら「覚悟を持って進める」という他なさそうです。
「明らかに危ないけど、文化的なものを守る方が大切だよね」という意識がイタリアでは強いらしく、「危ない橋は渡らない日本」での実現は相応の覚悟が必要になるかもしれません。
日本で参考にしたい美しい村づくりについて学ぶ
講演者プロフィール 島村菜津氏(ノンフィクション作家)
毎年数ヶ月をイタリア各地で過ごし、紀行・美術・映画などの記事を各誌に寄稿。イタリアの食の思想を4年間にわたり取材した著書『スローフードな人生! …イタリアの食卓から始まる』(新潮社)では、「スローフード」という概念を 日本に広く知らしめました。
イタリアでの地域産業づくりにも明るく、今回は特に町全体を一つのホテルとしてとらえ、空き家活用や観光から地域に産業を生んでいく取り組み「アルベルゴ・ディフーゾ」を中心に教えていただきました。